失敗してもいい、壊してもいい。
進化し続けるGRヤリスを生み出す
開発現場の挑戦
2020年の発売以降、
さまざまなモータースポーツに参戦し、
「壊しては直す」を繰り返して、
GRヤリスは進化を続けてきた。
その進化はマスタードライバーのモリゾウをはじめ、
開発に携わる者たちすべての挑戦の上で
成り立っている。
失敗やクルマを壊すことは悪いことではない。
チャレンジにかけた想いや、
そこから明らかになった事実こそが、
絶え間ないクルマの進歩をもたらすからだ。
挑戦し続ける中で、1つの形として
お届けする今回の改良モデル。
そこに秘められている挑戦の物語の一部を紹介。
MOVIE of DEVELOPMENT
GR YARIS 終わりなき挑戦と開発の軌跡
KEYWORDS of DEVELOPMENT GRヤリスの開発を象徴する大切な言葉
終わりなき挑戦
2020年、GRヤリスのラインオフ式でのこと。
モリゾウはこれからが開発のスタートだと
指針を示した。
通常ならばラインオフ式は
開発陣にとってひとつのゴールである。
しかしGRヤリスにとっては通過点でしかなく、
それは新たなスタートを意味していた。
WRCをはじめとする様々なモータースポーツの現場で
壊しては直し、改善を繰り返す。
こうした地道な改善の繰り返しが
今回のアップデートに繋がっている。
今もなお進化し続けているGRヤリス。
もっといいクルマづくりに終わりはない。
壊してくれて
ありがとう
GRヤリスの開発の現場で
エンジニアたちがよく使う合言葉、
それが「壊してくれてありがとう」だ。
クルマを壊すことが良いことと言ったら、
驚かれるだろう。
しかし、クルマが壊れたということは、
解決すべき新たな課題をあぶりだせたということ。
エンジニアやメカニックたちは、
たとえレース中に部品が壊れても
クルマが再スタートできるようにその場で必死に直す。
その経験や技術が積み重なっていくことで、
GRヤリスはさらに磨かれ、強くなる。
だから、エンジニアたちは
課題をあぶりだしてくれたドライバーに感謝するのだ。
壊れてもいいから、挑戦する。
つまりそれが「もっといいクルマづくり」において、
最も大切なマインドなのだ。
ドライバーファースト
GRヤリスの開発において、
もうひとつの大きな柱がある。
それが「ドライバーファーストのクルマづくり」である。
エンジニアはより良いクルマを生み出すために、
マスタードライバーのモリゾウをはじめ、
WRCドライバーや様々なカテゴリーで
活躍するプロドライバー、
テストドライバーに何度も乗ってもらい、
その言葉に耳を傾ける。
ドライバーが不満を覚えた感覚は何なのか?
エンジニアは走行データと照らし合わせながら、
各ドライバーのかすかな感覚の違いを
読み解き、言語化し、
具体的な部品のどの動きを指しているのか導き出す。
「クルマを良くするヒントは、
ドライバーの感覚と言葉に隠されている」。
既存のルールだけに捉われず
ドライバーファーストを第一に追求するのは、
そんな理由に基づいている。
DEVELOPMENT STORIES 進化を続けるGRヤリスの裏側にある物語
DEVELOPMENT STORIES 進化を続けるGRヤリスの裏側にある物語
Automatic
Transmission)
MT同等のレーシングな
走りを目指した新開発8AT
(GR-DAT)
走りを目指した新開発8AT
(GR-DAT)
モータースポーツでATを鍛える過程で熱は大きな課題となった。様々な冷却対策を検討し、レースやラリーで検証を繰り返した結果、空冷ATFクーラーの搭載によって課題を解決した。また、速い変速スピードとドライバビリティの両立も課題となったが、シーンごとに大胆に制御を変えるドライブモードセレクトを新規開発し、背反する課題を克服した。また、富士スピードウェイで適合した変速制御だけでは他のサーキットで合わないことがある。全世界10を超えるサーキットで適合を実施し、どこのサーキットのどのコーナーでも気持ちよく走れる状態を追求。さらに、全日本ラリー選手権やスーパー耐久シリーズにも先行投入され、実戦での評価が繰り返し行われた。
エンジン
勝利のために求められた、
出力・トルクの向上
エンジン
出力・トルクの向上
サーキット・ラリー等あらゆるシチュエーションでの戦闘力アップを目指し、エンジンの出力向上にチャレンジ。しかし、勝田範彦選手が参戦する全日本ラリー選手権でエンジン火災が発生。その原因を解析し対策を実施することで、出力・トルクの向上を実現した。
デザイン
ラリー参戦時の
破損から生まれた
分割構造バンパー
デザイン
破損から生まれた
分割構造バンパー
GRヤリスのテストドライバーも兼ねるトヨタ自動車副会長の早川が、新型ATの開発テストとしてラリーに出場していた際に、競技でのアグレッシブな走りによってフロントバンパーが破損。その時の経験が、新開発バンパーの分割構造のきっかけとなった。
性能を追求した結果
生まれたリヤデザイン
生まれたリヤデザイン
バックランプやリヤフォグランプが低い位置にあったことで、ラリーなどの競技中に飛び石や排気管の熱で破損し、リタイアの要因となることがあったため、その対応策としてリヤランプ類をリヤコンビネーションランプに集約。また、ハイマウントストップランプとリヤスポイラーを別体にすることで、リヤスポイラーのカスタマイズ性を拡張した。さらに、プロドライバーの大嶋 和也選手の「夜に街中でGRヤリスを見かけても、ベースのヤリスとの違いが分かりにくく、リヤランプに変化が欲しい」との言葉も後押しとなり、機能とデザイン両方を改良するランプとなった。
ファースト
コックピット
プロドライバーとともに
ドライバーファーストを
追求したコックピット
ファースト
コックピット
ドライバーファーストを
追求したコックピット
スーパー耐久シリーズ参戦車および全日本ラリー選手権参戦車をモチーフに、操作パネルとディスプレイをドライバー側へ15度傾けて設置することで、視認性と操作性を改善。スポーツ走行時のみならず日常生活でも使いやすいスイッチ類の配置にこだわった。また、ドライビングポジションを25mm下げ、合わせてステアリング位置も調整することにより、ドライビング姿勢を改善。さらに、インナーミラーの取り付け位置をフロントガラス上部に移動させ、センタークラスターの上端を50mm下げることにより、前方視界を拡大した。
プロドライバーからのフィードバックを取り入れるため、発泡スチロールで造作したコックピット模型を用いて”福笑い”を実施。モータースポーツシーンを想定し、肩から一定距離のリーチ上で、操作・視認しやすい配置を1つ1つプロドライバーと確認していった。その結果、レーシングハーネスやバケットシートを装着した使用も考慮に入れたコックピットを得た。
ボディ
ユーザーが求める
操縦安定性を目指して決断した
プラットフォームの改良
ボディ
操縦安定性を目指して
決断したプラットフォームの改良
サスペンション取付方法の変更はベースのプラットフォームに対する改良となり、耐久強度をはじめとする様々な項目の再検証が必要となるため、ハードルの高い開発であったが、モータースポーツシーンで使用するユーザーからの声が後押しとなって改良を実現した。
セレクト
1%の違いを追及した
4WDモードセレクト
セレクト
4WDモードセレクト
新しい4WDモードセレクトは、「駆動力配分を1%単位でテストできないか」という大嶋和也選手のアドバイスから開発をスタートした。GRAVELモード(前輪53:後輪47)は、富士スピードウェイでの走行評価において、駆動力配分を1%刻みでテストをして辿り着いたバランス。前輪の駆動力配分が53%の時にタイヤのスキール音が変わり、GRヤリスの車両諸元においてもっとも四輪を使える配分であることがわかった。TRACKモードは当初、駆動力配分が可変することによりサーキット走行でドライバーへ違和感を与えていた。その理由を探るために可変量・速度・連続性などを徹底的に追求した結果、ドライバーの意図に沿った車両挙動となる可変制御にたどり着いた。
ブレーキ
モリゾウのラリー参戦が
きっかけで生まれた
競技向けパーキングブレーキ
ブレーキ
きっかけで生まれた
競技向けパーキングブレーキ
TOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジに参戦する中でのモリゾウからのフィードバックを活かし、パーキングブレーキの配置を変更*1。標準の位置に対して車両前方へレバーを移動することで、ステアリングとの距離を近づけ素早い操作を可能にした。また、角度を立てることで引きやすさを向上し、操作時の負担を軽減している。
*1. RCにメーカーオプション設定。